生きることを諦めないこと

本当の言葉を書きます

命の値段。俺なら死を選ぶ

 厚生労働省は16日の中央社会保険医療協議会中医協)で、超高額の抗がん剤オプジーボの公定価格(薬価)を2017年2月に50%引き下げる方針を提案した。定例の薬価改定は18年度だが、オプジーボに限っては特例で値下げする。大幅な値下げで、社会保障費の伸びに一定の歯止めをかける。

 オプジーボは小野薬品工業が販売する、皮膚がんや肺がんの治療薬。患者1人に1年間使うと約3500万円かかる。5万人の肺がん患者が使えば費用は1兆7500億円に達するとの試算もある。米国や英国では薬価が日本の半分以下となっており、厚労省は医療費の膨張を防ぐためにも大幅な引き下げが必要と判断した。

 値下げには「市場拡大再算定」というルールを使う。年間の売上高が企業の予測を大幅に超え、1500億円以上に達した場合には最大50%値下げできる。

 小野薬品はオプジーボの17年3月期の売上高を出荷ベースで1260億円と見込む。厚労省はこれに諸経費や値引き分などを足すと1516億円に膨らむと試算しており、50%値下げのルールを適用できる見通しが立った。

日本と思えぬ獄死

<法医学教授>「勾留中に暴行死の疑い」奈良県警を告発
毎日新聞

11月15日 10時56分|Yahoo!ニュース
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 2010年2月に奈良県警が逮捕し、勾留中に死亡した男性医師(当時54歳)について、司法解剖結果などを調べた出羽厚二・岩手医大教授(法医学)が15日、遺体の状況から取り調べの際に暴行を受けた可能性があるとして、特別公務員暴行陵虐致死容疑で県警に告発状を提出した。容疑者は不詳とし、特定していない。

 男性医師は、医療法人雄山会「山本病院」(奈良県大和郡山市、廃院)で06年に起きた男性患者死亡事件を巡り、業務上過失致死容疑で10年2月6日に逮捕された。県警桜井署で勾留中の同25日に死亡し、司法解剖で死因は急性心筋梗塞(こうそく)とされた。

 告発状で出羽教授は、解剖結果では男性医師の遺体の足や頭などに皮下出血があり、打撲傷だと指摘。取り調べ中に暴行を受けた傷が原因で腎不全などを発症し、死亡したと訴えている。

 医師の遺族は13年2月、県警が勾留中に適切な治療を怠ったなどとして県に約9700万円の損害賠償を求めて提訴し、奈良地裁で係争中。出羽教授は、07年の大相撲時津風部屋の力士暴行死事件で、力士を解剖して「多発外傷によるショック死」と鑑定し、当初病死とした愛知県警の判断を覆したことで知られ、今回は遺族側の依頼で調査した。

 民事訴訟奈良県側は「暴行は一切ない。足の出血は留置場で座る際に床で打ったことが原因」などと主張している。【塩路佳子】
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最終更新:11月15日 11時53分

(C)毎日新聞/毎日新聞社

 

篠原涼子ポスターのインパクト

ノーギャラで恩返し、篠原涼子モデルの斬新すぎるポスター
週刊女性6月9日号

2015/5/26



 人気女優・篠原涼子がモデルを務めている、群馬県桐生市の観光ポスターが話題を集めている。「(問い合わせの電話に)よくぞ、という思いです。反響は数字にも表れていまして、観光協会Facebookは2万人以上が閲覧。そして市役所のHPへのアクセスも3万件を超えまして、これも市のHP始まって以来の高アクセス数で、それぞれが最高記録になりました。市民のみなさんにも喜んでいただいていて、“よくやった!”との声もいただいています」(桐生市役所・観光交流課担当者)

 東京・東銀座の歌舞伎座前に店を構える群馬県のアンテナショップ『ぐんまちゃん家』内にも、貼られているこのポスター。各市の観光案内ポスターが並ぶ中で、それは確かに異彩を放っている。

「大胆に肩を出して黒いドレスを着た篠原涼子さんが、まっすぐカメラ目線でポーズ。新ファッション誌の創刊か、はたまた化粧品など新商品広告かと思いましたよ。ところがローマ字でブランド名のように『KIRYU』、そして小さく《桐生市》ですからね。そこで初めて桐生市のポスターだとわかりました」(広告代理店関係者)

 ポスターにはさらに小さく《桐生市観光大使 篠原涼子》とある。それにしても観光誘致ポスターというのは、名所や食べ物、特産品などの写真や、街の売りを説明する文章など、情報を詰め込んだものが一般的だ。

 桐生市はなぜ、ファッション誌のようなポスターになったのか。

「当初は織物工場ののこぎり屋根ははずせない、発祥地と言われるソースかつ丼を載せてはとか、幅が広いひもかわうどんも……などいろいろな声もあったのですが、ありきたりのものではダメだと。あえて情報をすべてそぎ落として、『KIRYU』という文字と篠原涼子さんの魅力を全面的に打ち出しました。そして桐生市は織物の町なので、下に少しだけ帯の柄を入れて。あとは “どんな町なんだろう?”とウェブ上で調べていただいて、見た人の思いによって情報を導くような、ポスターはそんな“入り口”として位置づけました」(前出の担当者)

 しかもこのポスターは“本物”の如く、かなり本気の作りとなっている。プロカメラマンの渡辺達生氏が写真を撮り、SMAPを担当するスタイリストも参加。 篠原サイドの協力のもと、企業広告であったならば本来数千万円はかかるであろう撮影態勢だ。

「予算のほうは300万円だったんですけど、A1とB1サイズ、モノクロとカラーそれぞれ1500枚ずつ、4パターンで計6000枚刷りました。篠原さん自身はノーギャラで出ていただいています」(前出・担当者)

 これも彼女の地元愛がなせるワザか、トッププロたちが集まった現場が、ポスター用紙と印刷代だけであろう300万円で収まったのだとか。

「彼女としては自分を育ててもらった、桐生市への恩返しの意味も込めて協力しているのでしょう。’10 年に同市に住んでいた最愛のお父さんが亡くなりましたが、以降も毎年のように市村正親さんら家族と里帰りをしているみたいですね。父と芸能界を目指した場所でもある桐生は、今も彼女の支えになっているのでしょう」(芸能プロ関係者)

 同市は今後、こんな計画も検討中だという。

「問い合わせが殺到している状態でして、ポスターを掲示してくれることを条件としまして、市内に限定せずに全国公募といいましょうか、欲しい方に差し上げようかと企画しているところです。6月くらいになるかと思いますが、全国から応募してモノクロとカラー両方100枚ずつでどうかと検討しています」

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否定される大統領

トランプ氏の喜びはオバマ氏の苦しみ 国際ニュース:AFPBB News
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▲ キャプション ▲トランプ氏の喜びはオバマ氏の苦しみ
2016/11/10 14:10(ワシントンD.C./米国)【11月10日 AFP】国の団結を掲げ8年前に初の黒人大統領に選出されたバラク・オバマBarack Obama)米大統領にとって、今年の大統領選で共和党候補として出馬したドナルド・トランプDonald Trump)氏が勝利したことは、大きな屈辱となったのではないだろうか──。

 
 選挙活動中、オバマ氏は全米を飛び回り、そのカリスマ性と魅力の部分で民主党候補ヒラリー・クリントン国務長官を補ってきた。政治的観点からすると、オバマ大統領の敗北である。

 しかし、オバマ氏にとって、70歳の不動産王が手にした成功は、いわゆる米2大政党間での敗北以上に、個人的にも手痛い一撃となった。

 今回の選挙を通じて見えてきたのは、グローバル化や多様性といった急速な社会の変化への対応で難しい立場に置かれた白人労働者階級の意向を探ることに、オバマ氏が失敗したとみられるということだ。

 トランプ氏は、これまでオバマ氏が取り組んできた政策の大半に関して、撤廃や再検証を公約に掲げ選挙戦に臨んだ。これらの中には、気候変動問題への取り組み、2015年パリ協定、環太平洋連携協定、そしてオバマ氏の名が付いた医療保険制度改革なども含まれている。オバマ氏は今後、自らの「レガシー」がどれほど残るのだろうと自問するかもしれない。

 政治的にも人間的にも、オバマ氏とトランプ氏以上に異なる2人の人物を想像することはそう簡単ではない。

 ケニア人の父親と米国人の母親を両親に持つオバマ氏は、自身の力で人生を切り開き、米ハーバード大学に進学。一方のトランプ氏は、家族の財産を相続し、ホテルやカジノを中心とする巨大な不動産企業を築き上げた。

 また、オバマ氏が理路整然としたスピーチを好み、失言などほぼ皆無であるのに比べて、ビジネスマンのトランプ氏は、攻撃的で時には下品な言葉を使い思ったことをまくしたてる。

 オバマ氏は最近、トランプ氏に対する批判の中で、選挙では「民主主義そのもの」が問われているとまで語っていた。

■「バーサー・ムーブメント」

 2011年に、オバマ氏の出生地に関する疑惑が浮上し、大統領となる資格の有無が取りざたされた際には、トランプ氏は数か月にわたってこのいわゆる「バーサー・ムーブメント」を扇動した。オバマ氏は「ばかげている」と怒りをあらわにし、記者会見を開いてハワイ生まれであることを示す出生証明書を公表した。

 この数日後、トランプ氏も出席したホワイトハウス記者会主催の夕食会でオバマ氏は、「出生証明書問題が決着して、ドナルド以上に喜び、満足している人はいないだろう」、「これでようやく他の大切な問題に集中できるだろうからね。『月面着陸は作り話ではないか?』というような」と語っていた。

 そして5年が経過した今年、オバマ氏がホワイトハウスを明け渡す相手が、ほかでもないトランプ氏に決まった。(c)AFP/Jerome CARTILLIER
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人間はシムシティではない

岡本裕志
特集
コンパクトシティはなぜ失敗するのか 富山、青森から見る居住の自由
11月8日 14時0分配信

 
戦後の人口増加と成長のもと、居住地域はいたるところに広がった。だが、人口が減少する昨今、都市機能や居住地域をコンパクトにまとめる行政効率の良いまちづくり「コンパクトシティ」政策が各地で進められている。多くの自治体で巨費を投じられているものの、その効果には賛否両論がつきまとう。なぜ明確な「成功」の声は聞こえてこないのか。コンパクトシティ政策の問題とは何か。先駆的に取り組んできた富山市青森市を訪れ、人口減少時代の都市のあり方と、その先にある「居住の自由」の行方を探った。(ライター・庄司里紗/Yahoo! ニュース編集部)
コンパクトシティ“先進”都市・富山
青色と銅色のラインに彩られた北陸新幹線が滑りこむJR富山駅。改札を抜けると、正面のホームで出発を待つ近未来的なデザインの路面電車が目に飛び込んでくる。富山市が全国に先駆けて導入した次世代型路面電車LRT(Light Rail Transit)だ。
LRT環状線富山駅。JRから屋外に出ずに乗り換えが可能(撮影: 岡本裕志)
9月中旬の平日、朝8時30分。中心街を循環するLRT環状線に乗る。通勤ラッシュの時間帯だが、乗客は10名ほど。空席が目立つ車内にはバッグを隣の座席に置いて化粧を直している女性もいる。
LRTは人通りのまばらな目抜き通りを軽快に走っていく。沿道には富山国際会議場や建築家・隈研吾による富山市ガラス美術館など、真新しい建築が整然と連なっている。
LRTも整然とした町並みも美しいジオラマのような風景だ。富山市が2002年から全国に先駆けて推進してきた「コンパクトシティ」政策の賜物だった。
コンパクトシティとは、都市機能が高密度にまとまり、徒歩や公共交通での移動がしやすい都市形態のことだ。コンセプトは1970年代の米国で、行き過ぎた郊外化への反省から生まれたとされている。日本では2005年頃から注目を集めるようになった。
富山市ガラス美術館の入る複合施設「TOYAMAキラリ」(撮影: 岡本裕志)
都市をコンパクト化すれば、郊外に広がった商業・居住エリアから空洞化した中心街に活気を取り戻せる上、インフラ維持管理などの行政サービスも効率化できる。そのためコンパクトシティ政策は、秋田県秋田市、栃木県宇都宮市新潟県長岡市など多くの自治体で再開発のテーマに掲げられていった。
背景には、政府による強力な後押しがある。国は2006年、自治体が定める「中心市街地活性化基本計画」のうち、認定した計画に交付金や税の特例を適用する形で、自治体のコンパクトシティ化を支援し始めた。認定数は累計136市200計画に上っている。
このように本格化してきたコンパクトシティ政策だが、その効果には疑問の声もつきまとう。今年7月、総務省が行った「地域活性化に関する行政評価」で、「中心市街地活性化基本計画」は評価対象とした44計画のうち目標を達成できた計画が「ゼロ」と判明。他の地域活性化手法と目標達成度に明らかな差異があることを重く見た高市早苗総務相が、関係省庁に改善を勧告する事態となっている。
果たして「コンパクトシティ」は、本当に都市政策として有効なのだろうか。
路面電車」のイメージを一新するLRT(撮影: 岡本裕志)
公共交通「LRT」を切り札に
《ここは公共交通沿線居住推進事業の補助対象地区です》
富山市内の分譲地の売り文句には、時折こうした一文を見かける。「公共交通沿線居住推進事業」とは、富山市コンパクトシティ政策の一環として進める居住誘導策だ。市は鉄道駅や主要なバス停を中心に「居住推進地区」を設定。地区内で新たに住宅を取得する市民に、一戸あたり最大50万円の補助金を出すことで、郊外への人口の拡散を防ごうとしている。
 
そもそも、なぜ富山市コンパクトシティ政策に注目したのか。
富山市の市街地は1970〜2010年までの40年間で約2.1倍に拡大。一方、人口は2005年をピークに減少へ転化した。現在約42万人を抱えるが、人口密度は全国の県庁所在地で44位の1平方kmあたり337人(新宿区は1万8300人)まで低下。激しい郊外化が進んでいるのだ。
市の試算(2004年)では、郊外化で人口密度が今の半分にまで低下すると、住民1人当たりの道路や下水道の維持更新費は2倍になるという。富山市都市整備部都市政策課の担当職員が語る。
「人口減少などで税収が減る中、街のすみずみまで道路や学校をこれまでと同じように維持管理していくのは無理があります。また、人が減ったことでスーパーや病院、公共交通などが撤退すれば、暮らし自体も困難になる。コンパクトシティはそれらの諸問題を解決する処方箋だったのです」
こうして富山市コンパクトシティ化へと舵を切った。2007年には、国が認定する前述の「中心市街地活性化基本計画」の第1号にもなった。
富山市コンパクトシティ政策を象徴するLRT環状線)の路線図(撮影: 岡本裕志)
市は計画の中で、まずLRTなどの公共交通を再整備し、駅前や中心街を再開発によって活性化しながら、散らばった居住エリアをゆるやかに中核拠点に寄せていきたいと考えた。
そうした取り組みの結果、LRT全線の1日平均乗車人数は大幅に増えたと担当職員は言う。「中心市街地への転入人口も毎年プラスになっていますし、コンパクトシティ政策の成果は着実に上がっています」。
車中心の「郊外化」が止まらない
だが、市民の中には異なる声もある。中心部に住む太田良子さん(28歳・仮名)はこう語る。
「中心部の景観はきれいになりました。でも、街が活性化している実感はありません。通りを一本外れれば、シャッター街や空き家が並んでいますから。LRTはお年寄りには便利だと思いますが、若い世代は今でも車移動が中心ですよ」
たしかに「昔は人の頭で前が見えないほどの人出で賑わっていた」という市中心部の商店街に、今その面影はない。では、富山市民はどこを生活圏にしているのか。多くの市民が口を揃えるのが、中心部から車で20分ほど離れたショッピングモールだった。
夕方5時。訪れたモールの屋内駐車場はほぼ満車。モール内は子連れの女性や学生、お年寄りのグループなど多彩な人々で賑わっていた。そして、目の前を走る国道の向かいには新興住宅地が広がる。大きな戸建てが軒を連ねる敷地内の道路では、走り回る子どもたちの嬌声が響き、子育て世代の多さがうかがえた。
この一帯は富山市が定める「居住推進地区」ではない。最寄りの鉄道駅からも遠い。だが、地元の開発業者によると、宅地の売れ行きは好調で「ほぼすべての区画が売約済み」との話だった。
富山市郊外部のショッピングモール。平日夕方、屋内駐車場は満車。屋外駐車場も次々と車で埋まっていく(撮影: 岡本裕志)
モール近くの住宅地(撮影: 岡本裕志)
市民の多くがいまだに郊外での暮らしを選んでいる。その現実を富山市都市政策課担当者に投げかけると、「承知の上」と前置きしながら、次のように説明した。
「あの辺りは2005年の合併前、旧婦中町の一部だったエリアです。旧婦中町時代に大型商業施設の誘致が進められました。あの一帯の賑わいはその名残といえます」
この事実が示すのは、すでに形作られた郊外から人の流れを呼び戻すことの難しさだ。結局、都市は市民によって細切れに所有されており、その市民の意思決定が自由である以上、街の再編は行政の思惑どおりには進まないのだ。
同時に担当者は「富山市コンパクトシティ政策は郊外の暮らしを否定するものではなく、あくまでも無秩序な郊外の拡大を抑止し、活気ある中心街と公共交通網を軸に街に人や企業が集まる流れを生むことが目標」と強調する。
「まちづくりの結果が見えるまでにはそれなりの年月が必要なのです」。公費も含む巨額の投資コストに見合う効果も含め、コンパクトシティの成否の判断はまだ早い、というのが富山市の意向のようだった。
一方、コンパクトシティ政策にまつわる明らかな「失敗」が市政を揺るがす事態となっているのが、青森県青森市だ。コンパクトシティ化を見据えた駅前再開発への投資が焦げ付いたことで、批判にさらされていた。
コンパクトシティ“失敗”都市・青森
9月某日、青森市内を一望する海沿いの展望台。遠く八甲田山のふもとまでびっしりと住宅が建ち並んでいる様子が一望できる。
青森市の眺め。遠く八甲田山の山裾まで宅地が広がっている(撮影: 岡本裕志)
展望台を出て青森駅に向かうと、駅前に赤い外観の巨大なビルが見えてくる。2001年に開業した再開発ビル「アウガ」。地下に鮮魚市場、地上4階までが商業施設、5〜8階は図書館などの公共施設が入居する複合施設である。
開館以降、多くの来館者を集めたアウガだが、売上げは初年度から赤字を記録。その後も慢性的な赤字経営が続き、ついに今年2016年、運営母体の第三セクターが事実上の経営破綻。ハコモノ行政の典型的な失敗プロセスをたどり、責任を巡って副市長と市長が相次いで辞任するなど、市政を巻き込む大問題となっている。中心街活性化の象徴だったアウガの失敗は、コンパクトシティ政策そのものを失敗と見なす根拠となった。
左手赤い外観の建物が「アウガ」。来館者は少なくないが、経営は破綻した(撮影: 岡本裕志)
だが、アウガ批判に反論する人もいる。
「一つのビルの失敗が都市政策と同列に語られるのはおかしい。アウガの問題はコンパクトシティ政策とは切り離して考えるべきだろう」
そう語るのは、1989年から五期、青森市長を務めた佐々木誠造氏。コンパクトシティ政策を推進した、まさに当事者である。
青森市長、佐々木誠造氏(撮影: 岡本裕志)
約30万人の人口を擁する青森市は、富山市と同じく郊外化の問題に悩まされてきた。中でも大きな課題だったのが除雪問題だ。青森市は年間降雪量6.8m(過去30年間の平均値)に達する世界有数の豪雪都市だ。積雪による交通網の麻痺や住宅損壊を防ぐには、効率的に除雪ができる「集住」が合理的だ。佐々木氏が言う。
青森市の除雪コストは年間30〜40億円にも上り、財政を圧迫していました。しかも郊外化によって年々、増加傾向にあったのです」
実現しなかったイメージ
危機感を覚えた佐々木氏は市長時代、いち早くコンパクトシティに注目。早くも1999年からその考えをまちづくりに活かしてきた。
まず、市域を「インナー」「ミッド」「アウター」の3エリアに区分。インナーに商業・行政・居住機能を集め、ミッドには居住・近隣商業機能、アウターには農地・自然を配して宅地開発や大型店の出店を規制する計画を立てた。
インナーの中心となる青森駅前には、公共投資によってシニア向け分譲マンションやホテルなどが次々と誕生。老朽化した駅前生鮮市場の再生事業として1980年代から計画が進んでいたアウガも、コンパクトシティ化の一端を担う形で185億円をかけて2001年に開業。来館者数は年間600万人を超えるなど活況を呈した。だが、売上げは予想の半分以下に留まった。
「景気の低迷で開業前にキーテナントが撤退したのは大きな痛手でしたが、他にも要因はある。そもそも当初はアウガ単体ではなく、駅前の複数の再開発プロジェクトと連携して街全体を活性化する計画だったんです」(佐々木氏)
大規模な駅ビルなどが建つ予定だった青森駅前(撮影: 岡本裕志)
佐々木氏とともに、30年近く中心市街地のまちづくりに取り組んできた青森の商業支援ベンチャー会社PMOの加藤博代表も、実現しなかったイメージをこう振り返る。
アウガを含む駅前の再開発エリアを中心にまずインナーの暮らしやすさを向上させ、除雪が困難になった郊外のお年寄りには街中へ住み替えていただく。そして、お年寄りが移住して空き家になったミッドエリアの住宅には、ファミリー世代の居住を促す。そうやって少しずつ街を小さくしていく、まさにコンパクトシティのイメージを描いていたのです」
青森市中心街区のまちづくり運動を「天命」と語る加藤博氏(撮影:岡本裕志)
だが、計画は思惑通りには進まなかった。佐々木氏は2009年、道半ばで市長選に落選。次期市長の下で再開発計画は白紙撤回され、青森市コンパクトシティ構想は暗礁に乗り上げた。
コンパクトシティの本質は、中心街の活性化という小さい話じゃなく、いかに人々が暮らしやすい街をつくるかということ。それは将来的な雇用の創出も視野に入れた長期的な取り組みなのです。それが中断してしまったことは残念でなりません」(加藤氏)
都市計画は、首長の交代といった政治的要因にも影響を受けやすい。アウガを巡る迷走は、その典型だろう。数十年という長い時間を要するまちづくりの難しさがそこにある。
ただ、青森市民の中には「街中には住みたくない」という人もいる。取材の帰路、タクシーの運転手(65歳)は、こう言った。
「街中は家賃も駐車場も高い。土地や家を買うなんてもってのほか。住めるのは、お金がある人だけ。ふつうの年寄りには無理。車があれば買い物にも困らないし、そもそも60年以上暮らした場所を離れるなんて考えられない。みんな住み慣れた場所で最後まで暮らしたいんだよ」
自治体の都合より自らの生活を優先するのは、市民にとって当たり前の感情だ。街中に住む「合理性」が見出せないかぎり、人はこれからも郊外へと向かうだろう。
青森市郊外の商業施設。市の計画では「ミッド」のエリアにある。生活の場でもあり、雇用の場でもある(撮影: 岡本裕志)
計画外の地域を選ぶ「居住の自由」
手段としてのコンパクトシティには課題が山積している。
郊外から中心部への住み替えはコンパクトシティ化の柱の一つだが、居住誘導策は、憲法22条が認める「居住、移転の自由」への介入との見方も可能であり、どの自治体も即効性のある施策を打ち出せていない。
それどころか、いまなお“コンパクト”と反対の動きである市街地の拡大は止まっていないという。「現実的に、街を面的に小さくすることは容易ではありません」。そう指摘するのは、地方都市の問題に詳しい日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員だ。
下図は、山梨県での2000〜2010年の居住地域の変遷を示したものだ。山深い地区にも居住エリアが広がっていることがわかる。藤波氏は「他都市でも同様の傾向が見られる」と言う。
 
「消滅する集落がある一方、そのすぐそばに新しい住宅地が出現するケースもある。もし文字通りに街をコンパクトにするのであれば、強制力を伴う居住制限区域を設けるなど、思い切った施策が必要になるでしょう」
その上で藤波氏は、今後はすでにある社会資本の有効利用によって「住民が付加価値の高い仕事に就ける仕組み作りをするのが最優先」と提言する。
「地域に住む1人あたりの経済的な豊かさを実現すれば、たとえ人口が減って行政サービスが行き届かなくなっても、地域でお金を出し合ってコミュニティバスなどインフラを維持することもできる。物理的に街をコンパクトにできない以上、地域の豊かさを向上させる施策にももっと目を向けるべきです」
地域政策や環境政策などの領域で研究活動を続ける藤波匠氏(撮影: 八尋伸)
しかしながら、都市のコンパクトシティ化はすでに国策的な色を強めている。政府は2014年、都市を「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」に分け、区域外の開発を抑制する「立地適正化計画」の導入を決めた。財政が逼迫する中、国が「理論としては完璧」なコンパクトシティ政策を急ぐのは、将来的な「居住制限」への布石と捉えることもできる。
こうした流れが一段と進めば、先祖代々からの土地や住み慣れた家から離れざるをえない人も出てくるだろう。自ら高いインフラコストを払ってでも愛着のある土地に住み続ける「居住の自由」を取るか、行政サービスの行き届く居住推奨地区で集住するか。選ばなければならない時代がすぐそこまで迫っている。


庄司里紗(しょうじ・りさ)
1974年神奈川県生まれ。大学卒業後、ライターとしてインタビューを中心に雑誌、Web、書籍等で執筆。2012〜2015年までの3年間、フィリピン・セブ島に滞在し、親子留学事業を立ち上げる。現在はライター業の傍ら、早期英語教育プログラムの開発・研究にも携わる。明治大学サービス創新研究所・客員研究員。
連載「土地」が日本を悩ませる
日本において長らく土地は資産と同義だった。だが少子高齢化が進む現在、もはや土地は「価値ある」「頼れる」「守るべき」ものではない。被災地、限界集落から地方都市、東京都心まで、「土地」はさまざまな形で日本を停滞させている。この連載では、現場の事例を取り上げ、日本の土地問題の正体に迫る。
第1回「地権者は「ゴースト」 所有者不明地という日本の難題」
第2回「増える空き家、「スラム化」する老朽マンション 撤去費用を支払うのは誰か」
[写真]
撮影:岡本裕志、八尋伸
写真監修:リマインダーズ・プロジェクト
後藤勝
[図版]
ラチカ
 
「土地」が日本を悩ませる 記事一覧(3)
 
コンパクトシティはなぜ失敗するのか 富山、青森から見る居住の自由

11月8日 14時0分配信
 
増える空き家、「スラム化」する老朽マンション 撤去費用を支払うのは誰か

7月29日 11時44分配信
 
地権者は「ゴースト」 所有者不明地という日本の難題

6月22日 9時0分配信
 

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産むための男子力


精子力」は年齢とともに衰える――治療法、費用…「男性不妊」の現実
7月27日 10時32分配信
日本では今、6組に1組の夫婦が不妊に悩んでいるという。なぜ、赤ちゃんができないのか――。原因は男性にもある。そして、専門医を訪ねる男性も少しずつ増えている。治療法はあるのか、費用はどの程度か。治療の先には吉報が待っているのか。男性不妊症をめぐる現場から報告する。(Yahoo!ニュース編集部)
ダイアモンド☆ユカイさんが語る「男性不妊症」の苦悩
伝説のロックバンド、レッド・ウォーリアーズの元ボーカリストダイアモンド☆ユカイさんは8年前、46歳の時に無精子症と診断された。それからの苦悩は、動画の中で赤裸々に明かされている。まず、その動画を見てほしい。
 
 
 

精子力」は年齢とともに衰える――治療法、費用、「男性不妊」の現実

ダイアモンド☆ユカイさんは、動画の最後でこう言う。
不妊治療をやってると、人生が不妊治療になっちゃうんだよね。(自分の場合は)1年半とか、それぐらいしかないんだけど、一生続いている感覚なんですよ。だから俺はもう、子どもを授かることは諦めた。2度の失敗でね。もう妻の体が持たないし、精神的にもお互いに来ちゃってるし。やっぱり無精子症っていうのは、難しいんだなって思った」
難しいと思ったけれども、ダイアモンド☆ユカイさん夫妻は最終的に、子どもを授かった。
不妊治療の葛藤について語るダイアモンド☆ユカイさん(撮影:藤元敬二)
男性不妊の治療は何がどう苦しいのだろうか。埼玉県に住む現在通院中の笹木準一さん(32)=仮名=に話を聞いた。妻(33)とは2012年に結婚。そろって「子どもは3人ほしい。明るい、にぎやかな家庭を」と望んでいた。
子どもができないので、結婚の約1年後、専門のクリニックを訪ねたが、「2年経ってないから不妊じゃありません」と断られたという。当時の基準は、定期的な性交渉が2年間あっても妊娠しない場合、とされていた。
笹木さんが振り返る。
「(クリニックでは不妊症ではないかと)結構主張したんです。(子どもが)欲しいんですと……。だけど、その時は相手にされなくて。『まだ大丈夫ですから』というような慰めばかりで」
男性の不妊症をテーマにした本も出版されている(撮影:藤元敬二)
男性不妊にはさまざまな「原因」がある
夫妻は若い時に子どもが欲しかった。子どもの運動会で一緒に走りたかった。笹木さんは大学まで棒高跳びの選手で、妻も中距離の選手。体をいっぱいに使って子どもに教育を、と考えていた。
さらに2年後、二人は別の専門クリニックの門を叩く。不妊は、女性に原因があると思われがちだ。笹木さん夫妻も、最初は妻が通った。「でも、妻1人の責任でもないかな、と思って、僕も行くようにしたんです。世間一般では、男性不妊が多いですよ、って言われるので、ちょっと、行ってみようと」。
笹木さんはこのとき、自分の原因ではないことを確かめるために行ったという。
男性の100人に1人が無精子症の疑いがあると言われている(撮影:藤元敬二)
精液検査をしてみたら、妻ではなく、笹木さんに問題があることがわかった。「精子の数は多いんですけど、動きが悪かったんです」。その原因を調べた結果、「精索静脈瘤」と診断された。精巣の周囲の静脈に瘤(こぶ)のようなものができる病気だ。
厚生労働省の研究班の調査(2015年)によると、男性不妊の原因は「精巣で精子を作る機能が低下」が82.4%。その内訳は、原因不明(42.1%)を除くと、精索静脈瘤が30.2%で最も多い。
 
結果を知り、笹木さんは、埼玉県の獨協医科大学越谷病院で手術する道を選んだ。精索静脈瘤の手術とは、一般的にどんなものなのか。この病院の副院長で、リプロダクションセンター長の岡田弘・泌尿器科主任教授は、こう説明する。
「(血液が)逆流している静脈を結んで、閉じてやるわけですね。最近は、おなかを切ったり、腹腔鏡でおなかに鏡を入れたりという大きな手術ではなく、局所麻酔で精巣の付け根のところ、2センチほど皮膚を切開し、手術用の顕微鏡を見ながら静脈だけを止めてやる。施設によったら日帰り。手術の傷口も目立たない」
男性不妊にも年齢が影響
男性不妊の顕在化には、さまざまな事情がある。その一つとして、挙げられるのが「晩婚化」だ。
女性は高齢になるほど、妊娠が難しくなる。日本産科婦人科学会のデータによると、女性は45歳で人工授精・体外受精による出産率が1%以下になってしまう。
 
岡田教授によると、男性の不妊にも年齢の影響があるという。不妊症で子どもがいない男性は、35歳を境に精子の力が衰えていくことがわかったというのだ。
ところが、男性の年齢は不妊とあまり関係ない、との説がこれまでは広がっていた。岡田教授はその考えに警鐘を鳴らす。
「加齢は、男性にも変化を及ぼしている。それを認識しなければなりません」「結婚年齢が高くなった結果、生殖年齢の限界が迫っている人が増えています。だから、不妊症治療はできるだけ早く『夫婦で』することが大事です」
 
さらに岡田教授は、不妊の原因は男性にも女性にも等しく存在すると強調し、こう続ける。
「男の人は不妊症の外来や泌尿器科に行くことをためらってしまう。この傾向はほかでも同じ。健康診断の数字がちょっと悪かった時、女性はすぐ医療機関を受診する。男性は言い訳して、なかなか受診しない。よく分からないプライドと恐怖心がある。自分は病気にならない、という変な自信もある。これが実は非常に危険です」
獨協医科大学越谷病院の岡田弘教授(撮影:藤元敬二)
不妊検査「まず女性から」が多数
男性不妊に対する男性の意識がいかに低いか。それを示すデータがある。横浜市立大学付属市民総合医療センターの湯村寧医師(生殖医療センター泌尿器科部長)をリーダーとする調査班が、厚生労働省の依頼で今年1〜2月に実施したインターネット調査だ。
不妊治療の経験を持つ男女や治療を検討中の男性ら、当事者333人から回答を得た。それによると、精液検査を受けたと回答した273人のうち、検査時期が「女性の検査が終わってから」は129人(47%)を数えた。これに対し「女性より先」は28人(10%)にすぎない。
「精液検査を受けたことがない」という回答は35人(10%)。理由の上位には「抵抗がある」「パートナーに言い出せない」が並んだ。こうした現状を前に、湯村医師は「医療側の情報発信をもっと増やすべきだ」と感じている。
「(不妊について)患者が分からないのは当たり前。医者がどんどん情報を発信していかないといけない。これから結婚する人たちも、不妊かもしれないということがあり得るわけです。そういうことから発信しないといけないし、性教育の中にも、そういう話を入れていかないといけないのかもしれません」
東京都内のマンションの風景。日本では夫婦6組のうち1組が不妊症に悩んでいると言われている(撮影:藤元敬二)
高齢化で遺伝子へのリスクも
あまり知られてない情報の一つに「治療費用」がある。「精巣内精子採取術」は約10万~45万円、「体外受精」は約30万〜40万円、「顕微授精」は約40万円。こうした費用を助成する制度もある。ただ、助成制度には年齢制限がある。
海外の不妊事情にも詳しい国立成育医療研究センターの齋藤英和・不妊診療科医長も「不妊の場合は早期の治療を」と呼び掛ける。海外の研究論文などもこぞって「高齢のリスク」を指摘しているからだ。
「お父さんの年齢が高くなると、(精子の)運動率や形態が悪くなるとかあるけど、さらに(問題は)遺伝子ですよね。ヒトの設計図のダメージも起きることが最近、分かってきたんです」
笹木さんが通院する獨協医科大学越谷病院は、男性の不妊治療に積極的に取り組む医療機関の一つだ(撮影:藤元敬二)
不妊治療を続ける笹木さんも今、年齢と戦っている。
「(不妊治療は排卵周期に合わせて)月単位で進んでしまうんで、すんごい時間をロスしている感じがして。あっという間に1年、2年経ってしまうんじゃないか、と」
焦りを感じる笹木さんを心配し、周囲の人たちも声をかけてくれるという。
「そのうちできるよとか、コウノトリが運んでくるものだからと言いますけど、それで気が楽になったことは、あまりないですね。結局、(子どもが)できない者はできないという現実があるので……。そこから逃げられないわけです」
 
 
 

精子力」は年齢とともに衰える――治療法、費用、「男性不妊」の現実

[制作協力]
オルタスジャパン
[写真]
撮影:藤元敬二
写真監修:リマインダーズ・プロジェクト 後藤勝

医療と健康 記事一覧(3)
 
「老化を止めたい」――広がる「卵子凍結」の実態

10月25日 12時17分配信
 
40~50代を襲う “血糖値スパイク”の脅威

10月7日 10時48分配信
 
精子力」は年齢とともに衰える――治療法、費用…「男性不妊」の現実

7月27日 10時32分配信

種なしというブドウさえ避ける現実

不妊治療、妻に言いかけた「もうやめよう」 男も傷つく“心ない言葉” 1年半の治療が教えてくれたこと
withnews

11月7日 7時0分|Yahoo!ニュース
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男性が繰り返し読んできたクリニックでもらったパンフレット=男性提供
 不妊治療を始めた夫婦。食事制限や毎日の注射など、負担は女性に偏る現実があります。一方で、女性に対してならばセクハラと非難されて当然の言葉でも、男性だと平気で言われることも。1年半、治療を経験した一人の男性の思いを聞きました。

 

【画像】娘がプリキュアに追いついた日、父の思いは… ブログに涙する人続出
 
「いずれできるだろう」思っていたが…

 「もうやめよう」。大阪府内の30代の男性市議は今年5月のある夜、妻にそう話そうと心に決めていた。2年前から始めた不妊治療。排卵日に合わせて性交するタイミング法から、人工授精、体外受精とレベルをあげていった。

 自分も妻も「体質的な問題はない」と言われていたため、「いずれできるだろう」と思っていたが、5回ほど挑戦した人工授精は失敗。2度目の体外受精を終えたときのことだった。
「まただめやった」通院の日々

 結婚後なかなか子どもができず、夫婦で話し合ってクリニックへの通院を始めた。「妻が35歳になるまで」「もしもどちらかに問題があったら、それ以上の治療はしない」。夫婦でルールを決めて臨んだ。

 通院を繰り返しても、妊娠しない日々が続いた。「まただめやった」と気が重くなる。

 市議という職業柄、地域での住民や議員の集まりに参加することは多い、おきまりのように「子ども、まだなん?」と聞かれた。結婚前は「はよ結婚しいや」という言葉があちこちから飛んできた。結婚したとたん、それが「子ども」に変わった。「女性だったら『セクハラ』と騒がれるような発言なのに」。男性に対する意識の低さを痛感した。

 不思議と、身近な支援者は何も言ってこなかった。あとで、後援会の70代の女性が「子どものこと、言わんといたって」と周りに頼んでくれていたことを知った。その女性も子どもがいない。子どもを生めないと「役立たず」と故郷に追い返された人もいる世代だ。「僕なんかよりもずっと大変な思いをしてきたんやろう」。
「もう、見ていられへんから…」

 治療で一番つらかったのは、妻の痛々しい姿を見ることだった。排卵誘発などの注射を毎日打ち、おなかはあざだらけになっていた。炭水化物と糖質は制限。翻って自分は――。クリニックのメンズルームで精子を採取すれば、お役御免だ。妻に隠れて、ケーキも食べている。負担は圧倒的に妻に偏っていた。

 妻の「しんどい」という言葉が、ずしんと重かった。「せめて痛みの半分引き受けられれば、もう少し気持ちが楽になるのに」。そんな思いが募っていった。

 今年5月、「もう、見ていられへんから、やめようと思う」と言葉にしかけた時、妻から「できたよ」と言われた。妊娠6カ月目に入ったいま、妻は「もしできていなかったら、治療をやめられへんかったと思う」と話す。

 不妊治療をきっかけに夫婦仲が悪くなったり、「やめどき」が見つけられずに悩んだりする話を聞くたびに、「僕らは運がよかっただけ」と感じる。
もう言わない「お子さんは?」

 来年3月が出産予定日だ。いまから心に決めていることがある。子どもが生まれても、あえて周囲に話すのはやめよう。ポスターやホームページに、子どもの写真を載せることもしない。

 結婚しない人、できない人、子どもがいない人、できない人。自分がそうだったように、口には出さない悩みを抱える人が必ずいるからだ。

 男性は「当事者になって初めて、悪意のない言葉でも、どれだけ人が傷つくかよく分かった」と振り返る。

 私もつい「お子さんはいらっしゃるんですか?」と聞いてしまうことがある。話題のきっかけに、家族の話が出たついでに、パーソナルデータとして――。

 「悪意」は全くないが、だからこそたちが悪い。「私に子どもはいません」と答えたあの人は、どう感じたのだろうか。
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わからなかった自閉症 15年前に出生前診断を受けた私がいま、思うこと
「結婚したら自由が効かなくなる」と思っていた僕に、妻が言った一言
最終更新:11月7日 12時11分

(C)withnews/The Asahi Shimbun Company.