生きることを諦めないこと

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超高層地震対策

 西日本の太平洋沖に延びる南海トラフで巨大地震が起きると、超高層ビルの横揺れは最大で幅6メートルになるとの予測を内閣府が公表した。長周期地震動と呼ばれるゆっくりした揺れが生じるためだ。

 マンションやオフィスビルなど高さ60メートル以上の高層ビルは、東京など三大都市圏を中心に2千棟以上ある。報告によれば、ビルが倒壊する危険性は小さいが、天井が落ちたり家具が倒れたりして被害が広がる恐れがあるという。怖さを知り、備えておきたい。

 長周期地震動は1往復するのに数秒以上かかり、船に乗っているように感じる揺れだ。高層ビルは共振を起こして揺れが増幅しやすい。2011年の東日本大震災では、震源から770キロ離れた大阪府湾岸の高層ビルで壁や天井などが壊れる被害が出た。

 今回の予測でも、マグニチュード9級の巨大地震が起きると、50階超のビルの最上階は大阪市で幅3~6メートル、東京23区内で同2~3メートルの揺れになる。25~50階建てビルでも大阪で2メートル、東京で1~2メートルの揺れになる。

 対策として、まず家具やオフィス機器の固定が欠かせない。重い冷蔵庫やコピー機などが動いて人にぶつかると命にかかわる。天井板などの落下防止策も必須だ。

 緊急停止したエレベーターに人がとじ込められるのを防ぐ対策も点検が要る。マンションの高層階には高齢者や体が不自由な人も多く住む。エレベーターが何日も止まった場合、移動手段をどうするか。ビルの管理会社や管理組合が事前に考えておくべきだ。

 最近の高層ビルでは5~8階ごとに地震計を置き、揺れを測って建物の安全性を素早く診断する技術が広がり始めた。揺れが収まった後に安全に業務を継続できるかどうかや、自宅に帰れなくなった買い物客らを受け入れられるかどうかを、判断したりする。

 こうした技術も積極的に活用したい。高層ビルの地震対策は死角が多いとされる。予測を機に、ひとつひとつ埋めていきたい。