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生きることを諦めないこと

本当の言葉を書きます

基本的に勘違いな商売では滅びる

 大塚家具がピンチに陥っている。2月に全店を改装してから4カ月。販売不振は止まらず、2016年12月期の単独最終損益は6年ぶりの赤字となる。経営権を巡る父娘対決を経て15年に復帰した大塚久美子社長は「事業モデルの転換」を掲げるが、かき入れ時のボーナスシーズンを控えた販売の最前線をみると、より大切な課題が浮かび上がる。


ボーナスシーズンの週末でも顧客はまばら(横浜みなとみらいショールームの上層階、25日、横浜市
 6月25日土曜日、大塚家具の主力拠点、横浜みなとみらいショールーム横浜市)。複数のカップルや子どもを連れた家族が販売員に案内され、ソファやベッドなどを見て回っていた。「長くお使いになるようでしたら、こちらの商品の方がおすすめですよ」。「あら、いいわね。でもちょっと値段が……」。やりとりは楽しげだが、それぞれ単価は数十万円に及ぶ。もうすぐ支給されるボーナスを当て込み、お客も販売員も真剣そのものだ。
 ただ顧客の姿がみられるのは、ショールームの下層階にあたる4~6階まで。7~12階の高層階ではかなりまばらだった。ただ各階に販売員は待機しており、それぞれ家具を磨いたりたまにやって来るお客に会釈したりと、手持ち無沙汰な様子だった。歩いて5分ほどの距離には、割安な価格で手ごろな家具やインテリア用品がそろうニトリの店舗がある。客層が異なるとはいえ、こちらは来店客でごった返していた。

 週末の来店客が振るわないのは横浜だけの問題ではなさそうで、有明本社ショールーム(東京・江東)や春日部ショールーム(埼玉県春日部市)も、上層階に向かうにつれて顧客の姿が減り、もの寂しい状況だった。

 「市場の変化に対応したビジネスモデルに転換する」。久美子氏は社長復帰以降、再三強調してきた。少子高齢化で婚姻の数そのものが減り、新設住宅着工戸数も頭打ちだ。家具のまとめ買いは期待しにくいうえ、若い世代を中心にかつての大塚家具流のつきっきりで接客するスタイルは敬遠する声がある。

 久美子社長は、品ぞろえもクッションなどの小物や10万~数十万円程度の中価格帯を充実させて「入りやすい店」を目指し、17年12月期に売上高を594億円とする中期目標を掲げている。

 ただ株式市場では、事業モデル転換の前に片付けなければならない課題があるとの声があがる。

 まずコスト構造の見直しだ。16年4~5月の平均客単価は消費増税の影響がない13年平均と比べて1割程度下がった。固定費を切り下げなければ利益は出ない。まず手を付けなければならないのが販売費・一般管理費だ。大塚家具の売上高に占める販売費・一般管理費の割合は15年12月期で52%。家具小売り最大手ニトリホールディングスは37%(16年2月期)、同じく中高価格帯の商品を中心に扱うカッシーナ・イクスシーは42%(15年12月期)だから10ポイント強開きがあることになる。

 次に店舗の合理化だ。全国16店舗のうち8カ所は売り場面積が9千平方メートルを超え、来店客からも「広すぎる」(首都圏の店舗に来ていた30歳代男性)との声が漏れるほど。郊外型モデルで成長してきたニトリでも最も大きい店舗の標準は6600平方メートル(2000坪)で、効率的な店舗運営のあり方を見直す余地はある。コスト面でも連結売上高500億円台にとどまるのに賃借料は毎年100億円強と負担が重い。

 大塚家具は3期連続で赤字だった08年~10年に店舗の再配置を進め、オフィスビルの高層階にあった幕張ショールーム千葉市)を閉鎖。有明の店舗も売り場を縮小した。17年12月期までの中期計画では千葉、大阪・梅田、北海道に大型店を出すと公表したが、販売不振が続けば新店はおろか、既存店の見直しも避けられそうにない。SBI証券の藤本誠之氏は「有明などアクセスが不便な店舗も目立つ。個別の店舗の閉鎖や移転なども検討すべきだ」と指摘する。

 大塚家具の株価は24日に1030円と年初来安値を更新した。投資家から見れば、今のコスト体質のままでは事業モデル転換の前に、黒字浮上の道筋が描きにくいのが実情だ。優先すべきは、体力のあるうちにいったん身を縮め、黒字を出せる体質に変わること。きっとそれは久美子社長自身が認識している課題に違いない。