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生きることを諦めないこと

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シーチキン炎上

シーチキンのゴキブリ炎上、「公表しない」宣言が運命を分けた
ダイヤモンド・オンライン

11月3日 6時0分|Yahoo!ニュース
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ゴキブリ混入というショッキングな出来事はもちろんだが、「公表しない」と言い切ってしまった広報対応のまずさが、大炎上の決定打となった(写真はイメージです)
 はごろもフーズのシーチキンにゴキブリ混入が発覚した。2014年12月、ペヤングの焼きそばにゴキブリ混入が発覚し、半年の長きに渡って販売中止となった事件は記憶に新しいが、両ケースとも、不祥事そのものに加えて、お粗末な広報対応がネット上の「炎上」に油を注いだ。

● 「公表しない」と言い切ったために ネット上では大炎上に発展した

 ペヤングを苦しめたあの「黒い悪魔」が、今度はシーチキンに「大炎上」をもたらした。

 10月27日、「シーチキンLフレーク」に1.5センチほどのゴキブリの死骸が混入していることが発覚した。

 メディアの取材に対して、製造元のはごろもフーズが「同様の申し出がなく他の商品への混入はない」と公表や自主回収などの対応をとらないと回答したことに、ネットのみなさんの怒りが爆発してしまったのだ。

  「不誠実すぎる」
「初動対応を完全にミスったな」

 このような批判の嵐をうけ、同社は慌てて、ホームページ上に「お詫び」を掲載。混入の事実を公表したものの、鎮火するどころか、「言い方が気に食わない」「上から目線だ」とさらに炎上。翌日には、当該製品の協力企業名まで明記して、製造休止を宣言する「お詫び②」を掲載する事態に追い込まれる。当然、株価も下落。28日までに苦情や問い合わせは約900件にも上ったという。

 さらに、11月1日には新たな「燃料」が投下される。なんと2014年に、同じ「シーチキンLフレーク」に7~8ミリのハエが混入したことがあったという「前科」が発覚したのだ。

 製造元は今回と同じ工場ということで、「ハエとかゴキブリとかどうなってんだ! 」と批判がさらにエスカレートした。

 しかしまたもや、事態をさらに悪化させたのは、ハエの件で取材申し込みをしたメディアに対して、広報担当者が放った言葉だった。

  「回答を控える」

 いろいろ事情があったのかもしれないが、リスク下での「ノーコメント」は広報コミュニケーション的には「失言」とされる。ネットでも、「隠蔽企業」「もう買わない」などこれまで以上に厳しいバッシングが起きている。ちなみに、11月2日現在、はごろもフーズのホームページには、まだハエについての声明はない。

 そんな現在進行形で「業火」に包まれているはごろもフーズだが、じゃあいったいどのような「初動対応」をすればよかったのだろうか。
● マスコミによって報じ方はさまざま 印象は最初の報道に左右される

 実際の火事で不審火の原因を特定するために、とにかく発火元がどこかを割り出すのと同じく、炎上の原因を考えるには、「元ネタ」をたどっていく必要がある。今回は、以下の日本テレビの第一報に突き当たる。

 《ツナ缶にゴキブリ はごろもフーズ公表せず》(日本テレNEWS24 10/27 18時58分)

 注目すべきは、このヘッドラインからもわかるように、「ゴキブリ」というショッキングな響きと並列して、「公表せず」ということにもフォーカスを当てた報じ方になっているという点だ。もちろん、中身に関しても同様で、「公表せず」を2回繰り返して、以下のようにしめくくられている。

 《はごろもフーズはその後事実を公表せず、取材に対し「同様の申し出がなく他の商品への混入はない」として、現時点では公表や自主回収などの対応をとらない考えを示した。》

 このニュースを目にすれば、ほとんどの人は「はごろもフーズ=ゴキブリが混入しても、公表や自主回収は必要なしと考える不遜な企業」という印象を強く受ける。

 人のイメージは、最初に見たこと、聞いたことにどうしても引きずられる。この第一報によって、ネット民のみなさんの不信感や怒りが大いに刺激されたことから考えると、今回の「炎上」の原因として、日テレ報道の「印象」が大きかったことが挙げられる。

 いやいや、何言ってんだ、「公表せず」というのは「印象」じゃなくて、「事実」だろ、という怒りの声が飛んできそうだが、原発事故然り、SMAP解散騒動然り、同一の事象であっても、それを報じるメディア側のスタンス、さじ加減によって、我々が受ける「印象」が左右されてしまう、ということに異論を挟む人はいないのではないだろうか。

 今回のシーチキン報道でもレベルは違うが、まったく同じ現象が起きている。たとえば、日テレから、やや遅れて速報を打った毎日新聞では、以下のように「自主回収せず」にフォーカスを当てているものの、公表していなかったことには、言及どころかまったく問題視していない。

 《<ツナ缶>ゴキブリが混入 自主回収はせず はごろもフーズ》(毎日新聞 10/27 20時40分)

 同様に、《シーチキン缶にゴキブリ混入 体長15ミリ 山梨で販売》(朝日新聞デジタル 10/27 21時15分)と報じた朝日新聞の場合、自主回収をしないということをさらっとふれた程度で、日テレが目くじらを立てた公表の有無はスルーしている。
● 中立公平な報道などあり得ない はごろもフーズはどう答えるべきだったか? 

 一方、これらとは逆に共同通信では、日テレ同様に「公表せず」を問題視するスタイルだが、「自主回収」の有無には言及さえしていない。

 《ツナ缶に昆虫混入―はごろもフーズ、公表せず》(共同通信47NEWS 10/27 21時46分)

 もし、朝日新聞などがお題目のように唱える「報道は中立公平」というのがホントなら、このようなバラつきは絶対に生まれない。日テレもNHKも共同も朝日もみな等しく、「ゴキブリ混入」「非公表」「自主回収せず」という情報をフラットに扱うはずが、現実はそうはなっていないのだ。

 なぜか。「相田みつを」ではないが、「人間だもの」ということが大きい。

 記者も人間である。人間がやっている以上、本人が意図せずとも書いた記事には何らかの「作為」が必ず生まれる。それが受け手に、さまざまな異なる印象を与えるのだ。これが時に、記者にその気がなくとも、事実と大きくかけ離れた「印象操作」が引き起こされてしまう原因でもある。

 そう聞くと、なにやら日テレが「公表せず」を騒ぎ立ててネット民を“釣った”、かのように聞こえてしまうかもしれないが、そういう話ではない。

 大多数の記者は、自分が取材したことを、ひとりでも多くの人に読んでもらいたいと思って仕事をしている。そこで記者が知恵をしぼるのが、「問題」の設定だ。同じ「ゴキブリ混入」というお題でも、日テレと共同の記者は「自ら公表していない」ということを問題だと考え、朝日や毎日の記者は「自主回収の有無」に着目した。

 つまり、このような報道のバラつきは、ニュースの「価値」を高めようという個々の記者の工夫、つまり「作為」が招いた結果に過ぎない。このバラつきを極力抑えるため、不祥事企業は「ポジションペーパー」と呼ばれる情報整理資料を作成、それを踏まえてブレることない対応方針を定めなくてはいけないが、今回の報道を見る限り、そうしたプロセスを踏んだとはとても思えない。

 つまり、日テレや共同のような報道を招いてしまった、はごろもフーズ側の広報対応にこそ、問題があるのだ。
 
 では、ゴキブリ混入が発覚した場合、はごろもフーズはどのような対応をすればよかったのか。「模範回答」みたいなものがあるので以下に紹介しよう。

 「保健所に調査を依頼しているところで、今の段階では詳しいことは言えません。消費者に対して現状やいきさつなどの説明が必要だと考えており、ホームページで情報を公表していきたい」

 もちろん、こう答えたところで、ゴキブリ混入の写真付きというのはインパクト大なので「炎上」はするだろう。ただ、少なくとも、今回のように「上から目線」「隠蔽企業」などの批判は起きることはない。
● ゴキブリが混入しただけでは ここまでの大炎上にはならない

 そんなのは細かい話であって、ゴキブリが混ざっていただけでアウトだよ、ペヤングを見ろ、という主張をされる方もいるかもしれないが、ペヤングの場合、告発者がSNSでゴキブリ写真を拡散した、というインパクトに加え、ペヤング側がかたくなに製造過程での混入を認めない態度をとって、告発者と対立するなど、初動対応が決定的にまずかった。ここに世の批判が集まったということを忘れてはならない。

 今回は、ゴキブリ混入が発覚した時点で既に、はごろもフーズ側は混入の事実を認め、被害者にも謝罪しており、それも受け入られている。先ほどの「模範回答」のような対応をしたとすれば、一般消費者への説明と謝罪も行ったことになる。そうなると、残る争点は、自主回収や生産停止をするか否かに絞られる。担当者の発言がSNSで繰り返し拡散され、大騒ぎとなったペヤングとシーチキンでは、置かれた状況がまったく違うのだ。

 そういう意味では、今回は最初のメディア対応さえしっかりとしていれば、ここまでのバッシングは避けることができたかもしれない案件だった。しかも、普通に考えれば、はごろもフーズはそれを避けるだけの「力」もあった。

 タネ明かしをすると、先ほど出した「模範回答」というのは、NHKの取材に対して、はごろもフーズが出した回答だ。(NHK NEWS WEB 10/28 0時16分)

 日テレの第一報を受けて、ネットが炎上をするなかで、公表をしないという方針から、慌ててホームページに公表をすると明言。直後に、ホームページ上に出した「お詫び」でも、以下のようなメッセージで、日テレの「公表せず」報道を打ち消そうと涙ぐましい努力をしている。

 《お申し出いただいたお客様への対応を最優先させていただいたため、結果として公表が遅れたことをお詫び申し上げます》

 今回の対応ばかりを見ると、そういうイメージはあまりないかもしれないが、はごろもフーズは元来、この手のリスクには慣れている部類に入る企業なのだ。
● 回収・返品の嵐に幾度も耐えて 成長してきたはごろもフーズのDNA

 缶詰業界は、どうしても金属片などの混入が起きる。成分の問題や虫混入リスクなども定期的に発生している。はごろもフーズも、2013年に、「シーチキンマイルド」でアレルギーの原因となるヒスタミンが社内基準を超えたとして、約672万個を回収している。01年には中国から輸入したミカンの缶詰に異臭が発生するとして、約8万3000缶を回収。同年には「シーチキンオイル無添加マイルド」のアルミ缶のふたが混入して約3万3000個を回収している。

 さらに遡れば、1969年には会社の存続が危ぶまれた「危機」もあった。みつ豆やフルーツ缶などのほぼ全商品に入っていたチクロを、米FDAが「発がん性がある」と発表。はごろもフーズは回収を迫られた。「シーチキン」の生みの親として知られる、元同社会長の後藤磯吉氏は、当時をこのように振り返る。

 《問屋からは返品が殺到するし、「何とかしろ」と私の家にも押しかけられる。会社も自宅も返品の山となりました。そこで私は店頭、問屋を含めすべての流通在庫を回収、損害については補償もすることを決断しました。回収額は全部で約五億円と一カ月分の売上高に達し、社内はもとより同業者の中から「はごろもは、もう終わり」との声が広まりました》(日本経済新聞 1988/02/08 )

 このような「危機」を乗り超えて、はごろもフーズは今のような大企業に成長したのだ。ちなみに、その功労者である後藤磯吉氏は、今でもその名が静岡財界に語り継がれる名経営者だ。常に時代を読む先見性を見込まれ、小さな缶詰工場を営む先代・後藤磯吉氏の「婿養子」となった。

 奇遇にも、今の社長の池田憲一氏も、後藤家の「娘婿」。そのすば抜けた営業手腕を後藤家に見込まれて、38歳の若さで社長に就任した。

 数多くの「危機」を乗り越えて会社を成長させた後、2011年に逝去した後藤磯吉氏は、こんな経営観をもっていた。

 《私は経営の根幹は誠実さと人からの信頼にあると考えています。はごろもが国内最大の缶詰メーカーに成長できたのも、経営危機を誠実さで何とか克服してきたからです》(同上)

 初動はつまずいた。しかし、まだリカバリーは可能なはずだ。池田社長にもぜひ後藤氏のような「誠実さ」で、この「危機」を乗り越えていただき
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最終更新:11月3日 6時0分

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